毎日新聞 1995年(平成7年)10月26日 木曜日 夕刊一面 


よみがえる大観の和紙
京の日本画家 涅槃図を描く

 日本画家の横山大観が約七十年前にすかせた、当時としては世界最大の和紙(杓五b 四方)を使い、京都市西京区の日本画家、藤野正観さん(45)がを描き上げた=写真。


一九二七年に福井県今立郡今立町の紙漉職人、初代岩野平三郎氏が大観の依頼を受 け、八人がかりで三十二枚すき上げた。
早稲田大図書館(現二号館)の壁画用などに十枚使い、現在、使用に堪える七枚のうち六枚は博物館などで保管。
三代目岩野平三郎氏が個人で保存していた一枚を、駒沢女子大などを運営する駒沢学園(東京都稲城市)が譲り受け藤野さんに依頼した。
 涅槃図は、釈迦の死の床に集まった弟子や動物たちが悼む図柄。
同学園は 来年二月に行う涅槃会式典で掲げることにしている。
京都市の寺にこもって制作に取り組んだ藤野さんは、「和紙は長い年月でかなり傷んで苦労したが、会心の作」という。